表情
満点の星空が綺麗。
時々見上げる夜空はいつも違う顔をしていた。
そんな空と彼の表情が被った。
一瞬口元が緩むがすぐに引き締まる。
パーンと銃声が鳴った。
それを合図に僕は闇の中へ駆けてゆく。
どうしてだろう、夜は暗いのに真っ暗ではない。
ほのかな月の光を頼りに庭を走る。
毎日のトレーニングは欠かさない俺。
毎日は仕事で出来ないから開いた時間にやっている。
こんな夜にやるのはいつものことで、いつも思う疑問をまた繰り返す。
この光は何処まで届いているのだろう。
おぼろげな自分の影にあの人が浮かんだ。
金属と肉の塊が当たる音はなんとも鈍く、鈍感な音だろう。
とても汚い。トンファーに付いた血を振り払えば親玉目掛けて走り出す。
目は爛々と輝き目の前の獲物に食らいつくように殴った。
コレを壊せばミッションコンプリート。
血しぶきが月にの光で煌いた。
嗚呼綺麗。
部屋に戻ったらすぐに窓を開けておく。
それからシャワーを浴びて、飯食って。
そういえば洗濯機を回さなくては。
そんなことをしていたら日付が変わったことを知らせる時計が鳴った。
もうそんな時間か、とベッドに向かおうと窓に背を向けた。
「山本、武」
「・・・雲雀」
振り返れば窓に座る人。
「もうフルネームで呼ぶのやめろよ;」
「お腹がすいた。今日は何?」
会話が成り立つのことは殆ど無い。
引かれあうように互い歩み寄り影は一つになる。
貪るような口付けを。傷をつけるかのような舐めあいを。忘れないように自分を刻む。
夜は真っ暗じゃない。
ほのかな明りに照らされ柔らかな表情を見合う。
お互い、夜だから見えないと心に闇を置いた。
見えない、見えないよ。
だから今だけ。
本当の君を。
数時間後に外には太陽が昇るというからその短い時間でいっぱい愛し合う。
今日も君の表情は違っていた。